胎児貧血

  • 胎児貧血の原因は?

    重症の胎児貧血の原因としてもっとも多いのは血液型不適合妊娠です。代表的なものはRh式血液型で、母親がRh(D)陰性、胎児がRh(D)陽性のときに母親の体内で抗D抗体が作りだされると、胎児が溶血性貧血をおこすことがあります。ヒトパルボウィルスB19感染(リンゴ病)などによっても胎児貧血になります。

  • 胎児貧血はどのように診断されますか?

    胎児貧血を診断する方法として、超音波検査(1)と胎児採血があります。超音波検査は侵襲が少なく繰り返しできますが、間接的な症状をとらえることしかできません。超音波ガイド下に臍帯静脈から胎児の採血をすることで、確定診断されます。

  • 胎児輸血とは?

    胎児輸血は、重症の胎児貧血の治療に用いられます。最も成功した胎児治療の一つであり、現在のような超音波ガイド下に臍帯静脈を介して輸血する方法は、1980年代から行われています。

  • 胎児貧血に対する胎児輸血以外の一般的な治療にはどのようなものがありますか?

    経過観察しながら胎児の成熟を待つか、早期に分娩をおこなって新生児に輸血をふくむ集中治療をするかのいずれかになります。しかし胎児貧血は一般に進行性のため、経過観察により病状は悪化することが多く、また早期の分娩では未熟性による問題が生じます。

  • 胎児輸血の歴史は?

    歴史的にみてもっとも最初の本格的な「胎児治療」が胎児輸血であり、X線透視下でRh不適合妊娠の胎児の腹腔内に輸血した1963年のLileyの報告(2)にさかのぼります。現在のように超音波ガイド下に臍帯静脈を介して輸血を行うようになったのは1982年以降になります(3)。日本では東北大学でRh不適合妊娠の胎児貧血に対しておこなわれた治療(4)が最初です。

  • 胎児輸血はどのように行いますか?

    母体の腹壁を穿刺する場所に局所麻酔をおこない、超音波ガイド下に臍帯静脈を穿刺します。状況によって胎児のお腹の中に輸血することもあります。感染症のないことが確認された、母体血漿との交差適合試験で適合したO型の血液を用い、計算して決めた量を輸血します(図1)。頻度は少ないですが、胎児心拍異常、穿刺部の出血や胎児の心不全、感染、前期破水、早産などの合併症があります。胎児輸血は、技術的に熟練を要するため可能な施設は限定されております。
    日本周産期・新生児医学会は、胎児輸血の実施にあたり「胎児輸血実施マニュアル」を2017年に発表しました。胎児輸血実施マニュアル

    図1
    図1

  • 胎児輸血の治療成績と予後は?

    予後は胎児貧血の原因によって異なりますが、血液型不適合妊娠による胎児貧血のため589例に実施した計1678回の胎児輸血の報告(5)では、生存率89%(1988~2000年)、97%(2001~2015年)という良好な治療成績でした。

  • 参考文献

    1. Oepkes D, et al. The use of ultrasonography and Doppler in the prediction of fetal hemolytic anemia: a multivariate analysis. Br J Obstet Gynecol 1994; 101: 680-684
    2. Liley AW. Intrauterine transfusion of foetus in haemolytic disease. Brit Med J 1963; ii: 1107-1109
    3. Bang J, et al. Ultrasound-guided fetal intravenous transfusion for severe rhesus haemolytic disease. Brit Med J 1982; 284: 373-374
    4. 谷川原真吾,岡村州博,他:超音波ガイド下胎児臍帯内輸血により生児を得たRh 不適合妊娠の一例.日産婦誌 1989;41:621-624
    5. Zwiers C, et al. Complications of intrauterine intravascular blood transfusion: lessons learned after 1678 procedures. Ultrasound Obstet Gynecol 2017; 50: 180-186